サルモネラ症
概要・推奨
概要
- サルモネラ菌感染症は、臨床的に大きく2つに分けられます。一つは腸チフスやパラチフスの原因となるチフス性サルモネラ(Salmonella Typhi, Salmonella Paratyphi)、もう一つは食中毒(胃腸炎)の原因となる非チフス性サルモネラ(non-typhoidal Salmonella)です。
- チフス性サルモネラは主にヒトを宿主とし、保菌者の便や尿によって汚染された食物や水を介して感染します。臨床像は、発熱などの全身症状が主体となる腸熱を呈します。
- 非チフス性サルモネラは、様々な動物や環境に存在し、汚染された食品の摂取によって食中毒を引き起こします。主に急性胃腸炎の症状を示し、先進国で多くみられます。
- 胃酸はサルモネラ菌に対する防御因子であり、制酸薬の使用、胃切除後、抗菌薬の使用などによって胃酸が減少したり正常細菌叢が変化したりすると、感染しやすくなります。
- 細胞性免疫不全の状態(HIV感染症など)や、胆道・尿路の解剖学的異常は、サルモネラ菌感染症の罹患リスクや重症化リスクを高めます。
- 腸チフスに罹患した患者の1-4%が慢性保菌者になるといわれています。一方で、非チフス性サルモネラが保菌状態を作ることはまれ(0.2-0.6%)です。
推奨
- チフス性サルモネラ(S. Typhi, S. Paratyphi)による感染症は、常に抗菌薬による治療が必要です。
- チフス性サルモネラ感染症の治療では、薬剤感受性試験の結果に基づいて抗菌薬を選択することが重要です。南アジアや東南アジアで感染した可能性が高い場合は、キノロン耐性を考慮し、感受性が判明するまではセフトリアキソンやアジスロマイシンが推奨されます。
- 非チフス性サルモネラによる胃腸炎に対しては、抗菌薬治療が保菌期間を長引かせる可能性があるため、原則として抗菌薬は使用しないことが推奨されます。