呼吸不全
概要・推奨
概要
- 非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)は、気管挿管や気管切開を行わずに、マスクなどを用いて陽圧で換気を補助する治療法です。持続気道陽圧(CPAP)もNPPVに含めて扱われることが多くなっています。
- 1980年代に閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療としてCPAPが普及し、その後、小型で在宅でも使用しやすいbilevel PAP装置や多様なマスクが開発されました。1990年頃より急性および慢性の呼吸不全に広く応用されるようになりました。
- 急性呼吸不全では、呼吸仕事量を軽減し、ガス交換を改善させ、気管挿管を回避することを目的とします。慢性呼吸不全では、主に睡眠中に使用することで、睡眠中の低換気を改善し、日中の高二酸化炭素血症を是正し、生命予後やQOLの改善を目指します。
- 急性呼吸不全では慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪や心原性肺水腫、免疫不全患者の呼吸不全などが良い適応とされます。慢性呼吸不全では、神経筋疾患、拘束性胸郭疾患、COPD、肥満低換気症候群などが対象となります。
- NPPVで用いられる人工呼吸器には、従量式と従圧式があります。換気モードとしては、CPAP、bilevel PAP、adaptive servo ventilation(ASV)などが病態に応じて選択されます。
- 呼吸不全は、呼吸機能障害のために室内空気呼吸時の動脈血酸素分圧(PaO2)が60 Torr以下となる状態です。
- 呼吸不全の状態が少なくとも1カ月以上続く場合、慢性呼吸不全と定義されます。
- 動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が45 Torr以下の場合はⅠ型呼吸不全、45 Torrを超える場合はⅡ型呼吸不全に分類されます。
- Ⅰ型呼吸不全は主に、換気血流比不均等、肺拡散障害、右->左シャントなどのガス交換障害が原因です。
- Ⅱ型呼吸不全は主に、肺胞低換気による換気障害が原因です。
- 低酸素血症の症状として、PaO2 60 Torr以下で頻脈、動悸、高血圧、頻呼吸、失見当識などが認められます。
- 高二酸化炭素血症の症状として、手のぬくもり、頭痛、発汗、縮瞳、羽ばたき振戦、傾眠傾向などが認められます。
- 急性呼吸不全に対する酸素療法の目的は、低酸素血症を是正し、組織の酸素化を維持することですが、過剰な酸素投与は有害となる可能性があるため、正常もしくはほぼ正常の酸素飽和度を維持することを目指します。
推奨
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪による急性呼吸不全に対しては、気管挿管を回避し、死亡率を低下させるため、NPPVの使用が強く推奨されます。
- 急性心原性肺水腫に対しては、酸素化、血行動態、呼吸数を改善し、気管挿管率と死亡率を低下させるため、NPPV(特にCPAP)を第一選択とすることが強く推奨されます。
- 免疫不全患者の急性呼吸不全に対しては、挿管に関連する合併症を減らし、予後を改善する可能性があるため、NPPVを第一選択とすることが推奨されます。