胸痛

概要・推奨

概要

  • 胸痛は、日常診療で遭遇する頻度の高い症状の一つであり、その原因は多岐にわたります。
  • 胸痛を訴える患者の背景には、生命を脅かす重篤な疾患が隠れている可能性があるため、常に緊急性の高い疾患を念頭に置いた対応が必要です。
  • 胸痛をきたす重篤な疾患として、急性冠症候群(急性心筋梗塞、不安定狭心症)、急性大動脈解離、肺血栓塞栓症、緊張性気胸、食道破裂などが挙げられます。
  • 胸痛の性状、部位、持続時間、増悪・寛解因子などの詳細な病歴聴取は診断の助けとなりますが、非典型的な症状で発症することも少なくないため、症状のみで重篤な疾患を安易に否定することはできません。特に高齢者や女性、糖尿病患者では非典型的な症状を呈することがあります。
  • 胸痛の原因は心臓や大血管、肺などの胸腔内臓器の疾患だけでなく、消化器、筋骨格系、皮膚疾患など多岐にわたります。例えば、鋭い痛みで吸気や咳により増悪し、座位前屈みで軽減する場合は心外膜炎が、胸焼けのような痛みで食後や臥位で増悪する場合は胃食道逆流症(GERD)が、圧痛を伴う場合は肋軟骨炎が、皮膚の発疹や水疱を伴う場合は帯状疱疹が、呼吸器症状や発熱を伴う場合は肺炎が、それぞれ胸痛の原因として考えられます。また、心筋炎も胸痛をきたす重要な疾患の一つです。

推奨

  • 胸痛を訴える患者に対しては、まずバイタルサインを確認し、心電図モニタリングを開始することが推奨されます。
  • 患者到着後10分以内に12誘導心電図を記録し、特にST上昇の有無を確認します。ST上昇型心筋梗塞(STEMI)が疑われる場合は、心筋バイオマーカーの結果を待たずに、再灌流療法の準備を開始します。
  • 病歴聴取では、症状の発症様式、性質、部位、放散痛、持続時間、増悪・寛解因子などを系統的に確認します。