腫瘍マーカー

概要・推奨

概要

  • 腫瘍マーカーは、がん細胞が産生する物質や、がんの存在に反応して体内で作られる物質を(主に血中、尿中などで)測定することで、がんの存在、量、性質を判断する指標です。
  • 腫瘍マーカーには、血清中に存在するタンパク質や糖鎖抗原(例:CEA、CA19-9)、がん細胞の遺伝子異常によって産生されるIgG自己抗体(例:p53抗体)などがあります。
  • 近年、次世代シークエンサー(NGS)技術を用いた「がん遺伝子パネル検査」が2019年6月より保険診療下で臨床応用されています。これは、複数の遺伝子の変化を一度に解析し、個々の患者に最適な治療法を選択するために用いられます。
  • がん遺伝子パネル検査は、特定の薬剤の効果を予測する「コンパニオン診断」と、より網羅的に遺伝子情報を解析する「ゲノムプロファイリング検査」に大別されます。
  • コンパニオン診断はエビデンスが確立した標準治療へのアクセスを目的とする一方、ゲノムプロファイリング検査はエビデンスがまだ十分確立されていない治療へのアクセスを目的としています。
  • 免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を予測するために、PD-L1の発現やマイクロサテライト不安定性(MSI)などがコンパニオン診断として用いられています。
  • 特定の遺伝子異常(例:NTRK融合遺伝子)は、がんの発生臓器を問わず治療薬の標的となり、臓器横断的な治療が行われます。
  • 腫瘍マーカーは、がんのスクリーニング、診断補助、予後予測、治療効果判定、再発モニタリングなどに利用されますが、その有用性はマーカーやがん種によって異なり、単独で確定診断が可能なものはほとんどありません。

推奨

  • 大腸癌や前立腺癌などのスクリーニングにおいて、便潜血検査やPSA(前立腺特異抗原)検査は推奨されます。一方で、CEAやCA125、CA19-9などを無症状者に対するスクリーニングに用いることは推奨されません。
  • 診断の補助として、食道扁平上皮癌におけるSCC抗原やp53抗体、膀胱癌におけるNMP22やウロビジョン検査などが有用です。びまん性神経膠腫の診断にはIDH遺伝子変異や1p/19q共欠失の検索が重要です。
  • 治療方針の決定において、コンパニオン診断としての腫瘍マーカー検査が推奨されます。例として、非小細胞肺癌におけるEGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子、乳癌や胃癌におけるHER2、大腸癌におけるRAS/BRAF遺伝子変異、悪性黒色腫におけるBRAF遺伝子変異の検査が挙げられます。