急性肺塞栓症

概要・推奨

概要

  • 急性肺血栓塞栓症(PTE)は、多くの場合、下肢や骨盤内の深部静脈にできた血栓(深部静脈血栓症:DVT)が血流に乗って肺動脈に到達し、血管を詰まらせることで発症します。
  • 塞栓源の90%以上は下肢深部静脈あるいは骨盤内静脈由来です。
  • このため、深部静脈血栓症と急性肺血栓塞栓症は一連の疾患群として、静脈血栓塞栓症(VTE)と総称されます。
  • 臨床症状は、無症状の軽症例から突然の心停止に至る重症例まで、肺動脈を閉塞する血栓の量や患者さんの心肺機能の状態によって大きく異なります。
  • 肺動脈の機械的な閉塞だけでなく、血栓から放出されるセロトニンなどの体液性因子が肺血管や気管支の攣縮を引き起こし、病態を悪化させることがあります。
  • 急激な肺動脈圧の上昇は右心室に大きな負担をかけ、右心室の拡張や機能低下を引き起こします。これにより、心臓全体の機能にも影響が及び、心筋障害を示すバイオマーカー(トロポニンやBNP、NT-proBNP)が上昇することがあります。
  • 約15~20%の症例で肺梗塞を合併し、胸の痛み、発熱、血痰などの症状が現れることがあります。
  • 卵円孔開存や心房中隔欠損を有する症例では、右左シャントを生じることで奇異性塞栓症(脳梗塞など)の原因となり、予後不良因子となります。

推奨

  • 急性肺血栓塞栓症が疑われる患者さんに対しては、まず検査前に臨床的な可能性(検査前臨床的確率)を評価することが推奨されます。
  • 検査前臨床的確率が低い、あるいは中等度と評価された患者さんでDダイマーが陰性の場合、追加の画像診断を行うことなく急性肺血栓塞栓症を否定することが推奨されます。
  • 急性期の治療方針を決定するため、sPESIスコアなどを用いて予後を推測することが推奨されます。