直腸脱・粘膜脱症候群
概要・推奨
概要
- 直腸脱は、直腸が肛門外に全層性に脱出する完全直腸脱、粘膜のみが脱出する不完全直腸脱(粘膜脱)、脱出が肛門内にとどまる不顕性直腸脱に大別される骨盤臓器脱の一つです。
- 疫学的には、3歳未満の小児と高齢者に多く見られます。中高年では女性に多く、男性の6〜9倍と報告されており、女性のピークは60〜70歳代です。
- 病因としては、直腸重積説や滑脱ヘルニア説があり、背景には肛門挙筋の離開、深いダグラス窩、過長なS状結腸、肛門括約筋機能不全、直腸仙骨固定不良、直腸瘤など複数の解剖学的異常が関与しているとされています。
- 主な臨床症状は、肛門からの脱出に加え、肛門痛、出血、便失禁、便秘、粘液排出など多岐にわたります。脱出する粘膜が輪状であることが、放射状に脱出する痔核との鑑別点となります。
- 診断は、視診や座位での怒責診で脱出を確認することで行います。他の骨盤臓器脱の合併を評価するため、排便造影検査が有用です。術前には肛門内圧検査や大腸内視鏡検査も行われることがあります。
- 治療法は、経会陰手術と経腹手術に大別されます。経会陰手術は、高齢者や重篤な合併症を有するなど全身麻酔のリスクが高い症例に適しており、Gant-三輪-Thiersch法、Delorme法、Altemeier法などがあります。
- 経腹手術は、開腹または腹腔鏡下で行われる直腸固定術が主で、再発率が低いという特徴があります。近年では、低侵襲である腹腔鏡下手術が選択されることが多くなっています。
推奨
- 直腸脱の術式選択において、骨盤腔内に原因がある便秘症や他の骨盤臓器脱の合併を評価するために、デフェコグラフィ(排便造影検査)を行うことを提案します。
- 直腸脱の脱出そのものを改善する目的でのバイオフィードバック療法や骨盤底筋体操は、有効性を示す報告がほとんどないため、推奨されません。
- 経会陰手術を選択する場合、脱出している腸管が5cm未満の症例にはGant-三輪-Thiersch法またはDelorme法を、5cm以上の症例にはAltemeier法を選択することを提案します。