静脈血栓塞栓症
概要・推奨
概要
- 静脈血栓塞栓症(Venous ThromboEmbolism: VTE)は、主に下肢の深い部分にある静脈に血栓ができる深部静脈血栓症(Deep Venous Thrombosis: DVT)と、その血栓が血流に乗って肺の動脈に詰まる肺血栓塞栓症(Pulmonary ThromboEmbolism: PTE)を合わせた疾患群です。
- PTEの塞栓源の90%以上はDVTに由来し、両者は一連の疾患として扱われます。
- PTEの症状は、無症状から呼吸困難、胸痛、さらには心停止に至るまで様々です。
- 日本におけるVTEの発症率は欧米より低いものの、増加傾向にあります。
- VTEの危険因子は、長時間の安静や手術後などの「血流の停滞」、血管壁の損傷などの「血管内皮傷害」、がんや妊娠などによる「血液凝固能の亢進」が挙げられます。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、VTEの合併リスクを高めることが報告されています。
- VTEは適切な診断と治療により予後が改善されます。PTEは急性期の死亡率が高いため迅速な対応が重要であり、DVTは後遺症として血栓後症候群(PTS)や再発、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)につながる可能性があります。
推奨
- 急性PTEやDVTが疑われる場合、まず問診や診察から発症の可能性を評価することが推奨されます。PTEが疑われ、発症の可能性が低~中等度でDダイマー検査が陰性であれば、画像診断を行うことなくPTEを否定できます。DVTの確定診断には下肢静脈超音波検査が推奨されます。
- 心停止を認める急性PTEでは、早急にV-A ECMOを導入します。
- 血行動態が不安定な高リスクの急性PTEに対しては、抗凝固療法に加えて、血栓溶解療法やカテーテル治療、外科的血栓摘除術が推奨されます。