膵嚢胞性疾患
概要・推奨
概要
- 放射線画像診断法の進歩と普及によって、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)を含む膵嚢胞が偶然発見される頻度が高まっています。偶然発見された嚢胞の約80%が分枝型IPMN(BD-IPMN)と考えられています。
- IPMNは、主膵管との交通を有する嚢胞性病変で、画像所見に基づき、主膵管型(MD-IPMN)、分枝型(BD-IPMN)、混合型に分類されます。
- MD-IPMNはBD-IPMNよりも、高度異形成(HGD)や浸潤癌のリスクが著しく高いことが知られています。切除例におけるHGD/浸潤癌の平均頻度は、BD-IPMNで31%、MD-IPMNで62%です。
- 病理学的には、異形成の程度により低異型度(LGD)、高異型度(HGD)、浸潤癌に分類されます。また、組織学的には胃型、腸型、胆膵型などの亜型に分類され、予後と関連します。
- IPMN患者では、IPMN自体が悪性化して浸潤癌になる(由来浸潤癌)だけでなく、IPMNとは別の場所に膵癌が発生する(併存膵癌)リスクも一般人口より高いことが報告されています。
- そのため、high-risk stigmata(HRS)やworrisome features(WF)といった危険因子に基づいてリスク評価を行い、手術や経過観察などの方針を決定することが重要です。
- 近年では、超音波内視鏡(EUS)や、EUSガイド下穿刺吸引(EUS-FNA)で得られた嚢胞液の分析がリスク評価に活用されています。
- 膵嚢胞性疾患には、IPMNのほかに、MCN、SCN、SPEN、仮性嚢胞などがあり、悪性化リスクや治療方針がそれぞれ異なります。
- MCNは主に中年女性の膵体尾部にみられる粘液性腫瘍で、前癌病変として扱われます。症候性病変や悪性を疑う所見を伴う場合には切除が考慮されます。
- SCNは通常良性で、無症候例では治療を要さないことが多い一方、SPENは悪性ポテンシャルを有するため、外科的切除が推奨されます。
- 仮性嚢胞は膵炎や外傷に続発する非腫瘍性病変であり、膵嚢胞の診療では腫瘍性病変との鑑別が重要です。
推奨
- 閉塞性黄疸、5mm以上の造影される壁在結節、10mm以上の主膵管拡張は、高度異形成(HGD)や浸潤癌のリスクが高い所見(high-risk stigmata: HRS)とされ、手術が考慮されます。
- 嚢胞径30mm以上、嚢胞の増大速度が年2.5mm以上、5mm未満の壁在結節、急性膵炎の既往、血清CA19-9高値、新規発症の糖尿病または既存糖尿病の急性増悪などは、懸念される所見(worrisome features: WF)とされ、EUSなどによる精密検査が推奨されます。
- 複数のWFが存在する場合はHGDや浸潤癌のリスクが上昇するため、手術適応を慎重に考慮することが推奨されます。