アルコール性肝障害

概要・推奨

概要

  • アルコール性肝障害(ALD)は、長期にわたる過剰の飲酒が主な原因と考えられる肝臓の病気です。
  • 非ウイルス性肝疾患の中で、近年は脂肪性肝疾患の枠組みが再編され(SLD:steatotic liver disease)、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)と、アルコール関連肝疾患(ALD/AALD)がしばしば併存することが臨床上重要です。したがって、飲酒量のみで二分するのではなく、アルコール曝露と代謝異常(肥満・糖代謝異常・脂質異常・高血圧等)の双方を評価し、線維化進展と発癌リスクを総合的に層別化する必要があります。
  • 日本肝臓学会の診断基準では、長期(通常5年以上)にわたる飲酒歴を有し、1日平均純エタノール60g以上の飲酒が診断の目安とされていますが、これは絶対条件ではなく、女性やALDH2活性低下例、肥満合併例ではより少量の飲酒でも発症しうることに留意する必要があります。
  • 病型はアルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝線維症、アルコール性肝硬変に分類され、肝癌を併発することがあります。
  • 背景の多くにアルコール使用障害(AUD)が存在し、近年増加しているメタボリックシンドローム関連病態との重複も問題となっています。
  • わが国では、肝硬変の約25%、肝細胞癌の約20%がアルコールに起因すると報告されており、その割合は増加傾向にあります。また、ALDによる死亡数も増加しています。
  • 女性は男性に比べて、より少ない飲酒量、より短い期間で肝硬変へ進行し、急性肝不全を発症するリスクがあるとされています。
  • 治療においては、断酒のみでなく飲酒量を減らす「ハームリダクション」という考え方も重要になってきています。
  • 国際的には、偏見をなくす目的で「アルコール関連肝疾患(alcohol-related/associated liver disease)」という呼称が推奨されるようになっています。

推奨

  • アルコール性肝障害(ALD)の診断補助として、糖鎖欠損トランスフェリン/トランスフェリン比(%CDT)などの飲酒マーカーの使用を考慮します。
  • ALDの肝線維化ステージの診断には、血清マーカーやtransient elastography(TE)が有用です。検査値と臨床的評価が乖離する場合や、各種マーカー間で乖離がある場合には、肝生検を考慮します。
  • 重症アルコール性肝炎が疑われる場合は、重症度スコアを用いて診断、治療方針の決定、予後予測を行うことが推奨されます。