抗がん剤(分子標的治療薬を含む)による下痢症への対応

概要・推奨

概要

  • 抗がん剤(分子標的治療薬を含む)による下痢は、薬剤が腸の粘膜に炎症や傷害を引き起こしたり、腸管の運動を活発にさせたり、腸内細菌のバランスを変化させたりすることなどが原因で起こります。
  • 免疫チェックポイント阻害薬による下痢や大腸炎は、自己免疫疾患・炎症性疾患様の副作用である免疫関連有害事象(irAE)として発現します。
  • 免疫チェックポイント阻害薬による胃腸障害は、全ての重症度を含めると30〜40%にみられ、Grade 3以上の重症例は10%前後と報告されています。
  • 抗CTLA-4抗体薬による下痢は全Gradeで23〜33%、抗PD-1/PD-L1抗体薬では11〜19%、両者の併用療法では15〜45%に認められます。
  • 発症時期は薬剤により異なりますが、免疫チェックポイント阻害薬によるGrade 3以上の腸炎は、投与開始後およそ4〜11週に多いと報告されています。ただし、治療開始から数日で発現したり、治療終了から数ヵ月後に発現したりすることもあります。
  • 下痢が持続すると脱水や電解質異常を引き起こし、重症化すると循環不全や意識障害に至ることもあります。
  • 免疫チェックポイント阻害薬による下痢や大腸炎は、腸穿孔による死亡例も報告されており、従来の細胞傷害性抗がん薬による下痢とは対処法が異なるため注意が必要です。

推奨

  • 患者には、下痢の初期症状(泥状便、水様便、腹痛、血便、粘液便、排便回数の増加など)についてあらかじめ説明し、症状を認めた場合は速やかに医療者に連絡するよう指導することが推奨されます。
  • 中等度以上の下痢(腹痛、粘液便または血便といった大腸炎の症状を含む)を認めた場合は、クロストリジウム・ディフィシル腸炎などの感染性腸炎を除外するため、便培養検査や便中白血球検査の実施が推奨されます。
  • 腸穿孔やイレウスなどを否定するために、単純X線または腹部CT検査(侵襲の面から最も推奨される)を行うことが推奨されます。