ムーコル副鼻腔炎、肺感染症

概要・推奨

概要

  • ムーコル症は、ムーコル(ケカビ)目に属する真菌による感染症です。
  • 主な原因真菌には、Rhizopus属、Mucor属、Lichtheimia属(旧Absidia属)などがあります。
  • これらの真菌は土壌など環境中に広く存在しますが、病原性が低いため、健常者に感染症を引き起こすことは稀です。
  • リスク因子として、コントロール不良の糖尿病、代謝性アシドーシス、血液悪性腫瘍、造血細胞移植、長期の好中球減少、ステロイドや免疫抑制薬の使用、鉄過剰状態(デフェロキサミン投与など)が挙げられます。
  • ボリコナゾール(ムーコル症に無効)による予防が行われている患者での発症が報告されており、近年、造血細胞移植患者での発症が増加しています。
  • 侵入門戸は主に副鼻腔や肺などの呼吸器ですが、外傷部位の皮膚から感染することもあります。
  • 血管への侵襲性が高く、組織の壊死や血栓形成を引き起こすことが特徴です。
  • 病型は侵入門戸や基礎疾患により異なり、鼻脳型、肺型、皮膚型、消化管型などがあります。
  • 診断は病理組織学的検査や培養が基本ですが、培養の感度は高くありません。胸部CTにおけるreversed halo sign(浸潤影の周囲を取り巻くリング状の陰影)は、アスペルギルス症よりもムーコル症に特徴的な所見といわれます。血清β-D-グルカンは原則として上昇しません。
  • 治療の原則は、早期診断、外科的切除、および高用量のアムホテリシンBリポソーム製剤.の投与です。

推奨

  • ムーコル症が疑われる場合、早期診断と迅速な治療開始が推奨されます。治療開始の遅れは死亡率を著しく上昇させることが報告されています。
  • 治療の基本は、原因となっている基礎疾患(糖尿病、アシドーシスなど)の管理、可能な場合の免疫抑制薬の減量、積極的な外科的デブリドマン、そして全身への抗真菌薬投与の組み合わせです。
  • 初期治療の第一選択薬として、アムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)の投与が推奨されます。