妊娠期乳癌
概要・推奨
概要
- 妊娠期乳がんは、妊娠中または出産後1年以内に診断される乳がんであり、思春期・若年成人(AYA)世代に発生する乳がんの一部です。
- 診断には超音波検査や、必要に応じてマンモグラフィが用いられます。針生検による組織診断も安全に実施できます。
- 妊娠の継続や出産、授乳が、乳がんの予後に悪影響を及ぼすことはないとされています。
- 治療方針は、非妊娠時の乳がんと同様に病期やがんの性質に基づいて決定されますが、妊娠週数と胎児への影響を十分に考慮する必要があります。
- 治療は、胎児への影響を最小限に抑えつつ、母体に対する最善の治療を行うことが原則です。
- 妊娠期乳癌の頻度は3,000妊婦に1人と推定され、妊娠期に診断されるがんの中で最も多いものの一つです。
- 年齢や病期を調整した場合、その予後は妊娠していない乳癌と差はないとされています。
- 妊娠による乳房の変化で診断が遅れることがあるため、妊娠中であっても乳房のしこりや変化があれば専門機関の受診が望ましいです。
- 診断では、超音波検査が第一選択となり、マンモグラフィも胎児への適切な遮蔽を行えば安全に施行可能です。造影剤を使用する乳房MRIは推奨されません。
- 治療の原則は、胎児への不利益を最小限にしながら、母親に対して最善のがん治療を行うことです。
- 治療方針は、病期、推奨される治療内容、診断時の妊娠週数などを考慮して決定されます。
- 妊娠週数に配慮すれば、妊娠中の外科療法や薬物療法は児への短期的な影響は少ないとされています。外科療法は妊娠31週まで、薬物療法は34週までが望ましく、それ以降は出産を待ってから治療を行うことが望ましいとされます。
- 分娩は正期産(妊娠37週)を待つことが望ましく、分娩方法は産科的リスクに応じて選択されます。
- 産後の化学療法が必要な場合は、薬剤の乳汁への移行を考慮し断乳が必要です。
推奨
- 妊娠期乳がんの治療は、腫瘍専門医と産科医を含む多職種チームで、個々の患者さんの状況と希望に応じて治療計画を立てることが推奨されます。
- 手術療法は、妊娠中期以降であれば全身麻酔下で安全に実施可能とされています。乳房温存療法も選択肢となりますが、術後の放射線療法は出産後まで延期することが推奨されます。
- 化学療法は、妊娠第1三半期には推奨されません。妊娠中期以降に化学療法が必要な場合は、アントラサイクリン系薬剤、シクロホスファミドの使用が推奨されます。