心筋炎

概要・推奨

概要

  • 心筋炎は、心筋を主座とした炎症性疾患であり、様々な病態が含まれる疾患群です。感染、薬物への曝露、免疫系の賦活化などの結果として生じ、病理学的には炎症細胞浸潤とそれに近接する心筋細胞の傷害(変性および壊死)を特徴とします。心膜まで炎症が及ぶと心膜心筋炎と呼ばれます。
  • 臨床経過や重症度は多岐にわたります。近年、国際的な動向を鑑み、発症から急性・慢性を分ける期間が30日を境界とする定義が採用されています。
  • 心筋炎は、臨床病型、病因、組織学的特徴によって分類されます。臨床病型分類には急性心筋炎、慢性活動性心筋炎、慢性心筋炎、慢性炎症性心筋症、心筋炎後心筋症などがあります。急性心筋炎のうち、急激に血行動態が破綻し致死的な経過をとるものは劇症型心筋炎と呼ばれます。病因分類では、ウイルスなどの感染性と、薬物や全身性疾患などの非感染性に大別されます。組織分類では、リンパ球性、巨細胞性、好酸球性、肉芽腫性に分けられます。
  • 各病型の定義は主に組織所見に基づいていますが、臨床所見も考慮されます。急性心筋炎は発症から30日未満で、炎症細胞浸潤と心筋細胞傷害を認めます。慢性活動性心筋炎は発症から30日以上経過しても、活動性の炎症と心筋細胞傷害が持続する状態です。慢性炎症性心筋症は、活動性の心筋細胞傷害を伴わず、炎症細胞浸潤と線維化を特徴とします。
  • 心筋炎の発症率や死亡率の詳細は不明ですが、急性心筋炎の年間罹患率は100万人あたり22人と推定されています。若年者の突然死の剖検例では6~10%に心筋炎が認められたと報告されています。
  • 新型コロナウイルス(COVID-19)に関連する心筋炎として、疾患そのものによるもの(約0.01%)と、ワクチン接種によるもの(100万回投与あたり2~3人)が報告されています。
  • 病因はウイルスが最多ですが、細菌、薬物、毒物、自己免疫によっても誘発されます。ウイルスによる心筋傷害は、ウイルスが直接心筋細胞に感染する場合と、間接的に免疫系を活性化させる場合があります。
  • 心筋炎の基本的な病態は、炎症期が1~2週間持続した後に回復期に入ることです。心筋壊死と炎症性物質により心ポンプ機能が低下しますが、多くは可逆的です。一部の症例では、炎症が遷延し、慢性活動性心筋炎や拡張型心筋症様の病態へ移行することがあります。

推奨

  • 心筋炎が疑われる患者さんに対しては、感染の徴候(発熱、頻脈)、心不全の徴候(低心拍出、左右心不全の所見)、不整脈の所見(脈の異常)を確認することが推奨されます。また、先行する感冒様症状の有無、症状の経過、皮疹、薬剤歴、渡航歴、自己免疫疾患の既往などを聴取することも推奨されます。
  • 心筋炎が疑われるすべての患者さんに対して12誘導心電図検査を施行することが推奨されます。急性心筋炎と診断された場合は、定期的な12誘導心電図検査と24時間心電図モニターを行うことが推奨されます。
  • 心筋炎が疑われるすべての患者さんに対して、炎症マーカー(白血球数、CRP)、心筋傷害マーカー(CK-MB、心筋トロポニン)を評価することが推奨されます。心不全の合併が疑われる場合は、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNPまたはNT-proBNP)、肝機能、腎機能、電解質、乳酸値を評価することが推奨されます。