肺ムーコル症

概要・推奨

概要

  • ムコール症(かつては接合菌症(zygomycosis)と呼ばれていたが、現在この用語は用いない)は、ムーコル目に属する真菌によって引き起こされる感染症です。
  • 原因菌はRhizopus属が半数を占め、中でもRhizopus oryzaeが最も多く分離され、土壌など環境中に広く分布し、主に胞子の吸入によって感染が成立します。
  • 血液疾患などを有する免疫不全患者や、好中球減少状態にある患者、コントロール不良の糖尿病患者に多く発症します。
  • 日本における発症頻度は人口10万人あたり0.2人と推計されており、侵襲性肺アスペルギルス症の約5分の1と考えられます。
  • 病型は、肺型、鼻脳型(鼻眼窩脳型)、消化管型、皮膚型、播種型の5つに大別されます。肺型は血液疾患患者に、鼻眼窩脳型はコントロール不良の糖尿病患者に多い傾向があります。
  • 菌糸による血管侵襲が特徴で、出血や梗塞を引き起こします。その結果、急速に病態が悪化します。
  • 予後は極めて不良ですが、近年の早期診断・治療により改善が見られます。

推奨

  • 胸部CT検査は診断に有用であり、10個以上の結節の存在や副鼻腔炎の合併、胸水、Reversed halo signなどは本症を疑う所見とされますが、例外も多いです。
  • 確定診断には、菌学的検査または病理組織学的検査が重要です。病理組織では、幅が広く(5~20 μm)不整形で、中隔(隔壁)がほとんどなく、直角に近い分岐を有する糸状菌が特徴的です(菌糸の分岐角度は鋭角から直角まで様々で、常に直角とは限らないことに注意)。
  • 血清β-D-グルカン検査は、本症の補助診断には有用ではありません。