糖尿病患者における心血管リスク
概要・推奨
概要
- 糖尿病は、心不全や冠動脈疾患などの心血管疾患の重要な危険因子です。
- 糖尿病患者では、非糖尿病患者と比較して心不全発症リスクが約2~4倍、冠動脈疾患の発症頻度も2~4倍高くなります。
- 日本の心不全患者の約20~45%に糖尿病が合併していると報告されています。
- 糖尿病は血圧、コレステロール、喫煙といった危険因子2個分に相当する冠動脈疾患のリスクとされています。
- 血糖コントロールが悪いほど、また罹病期間が長いほど冠動脈疾患のリスクは高くなります。
- 糖尿病の前段階である耐糖能異常の時点から、冠動脈疾患のリスクは上昇しています。
- 糖尿病性腎症や網膜症などの細小血管合併症は、冠動脈疾患のリスクをさらに高めます。
- 糖尿病患者における大血管症は、脳卒中、虚血性心疾患、末梢動脈疾患(PAD)として定義されます。
- 大血管症の予防には、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、慢性腎臓病、喫煙といった心血管リスクファクターを、早期から包括的に管理することが重要です。
- 耐糖能異常やインスリン抵抗性は、糖尿病発症前から心血管イベントのリスクを上昇させることが知られています。
- すべての糖尿病患者がリスク管理の対象となりますが、特に高齢者や血管症が進行した症例では、低血糖や低血圧のリスクに注意を払う必要があります。
- 心不全も糖尿病患者によくみられる重要な合併症であり、大血管症と同様にリスク管理が求められます。
- 糖尿病は動脈硬化性疾患の重要な危険因子です。2型糖尿病患者は健常者と比較して、冠動脈疾患や脳血管障害の発症が1.5~3.6倍に増加するとされています。
- 日本人を対象とした研究では、糖尿病患者の冠動脈疾患死亡リスクは2.8倍、冠動脈疾患発症率は健常者の約3.1倍、脳梗塞発症率は約3.4倍と報告されています。
- 糖尿病患者では末梢動脈疾患(PAD)のリスクが3~4倍高く、HbA1cが1%増加するごとにPADのリスクが26%増大します。
- 糖尿病に合併した冠動脈疾患は無痛性心筋虚血が多いこと、冠動脈病変が多枝にわたり高度でびまん性であり、石灰化病変が多いことなどが特徴として挙げられます。
- 糖尿病患者に合併した心血管疾患の予後は、非糖尿病患者に比べて不良です。
- 冠動脈疾患の既往がない糖尿病患者においても、家族性高コレステロール血症、非心原性脳梗塞、PAD、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害)、喫煙、血糖コントロール不良状態の持続は、冠動脈疾患のリスクをさらに上昇させます。
- 糖尿病は心不全の重要な原因であり、糖尿病患者では心筋梗塞や脳卒中よりも心不全が最初に発症する循環器疾患として最も頻度が高いと報告されています。
- 血糖コントロールを早期から良好に維持することは、長期的な合併症抑制につながることが示唆されています(Metabolic memory/Legacy effect)。
推奨
- 糖尿病患者の心血管リスクを低減するためには、血糖管理に加えて、高血圧、脂質異常症、肥満などの危険因子を包括的に管理することが推奨されます。
- 冠動脈疾患予防のため、糖尿病の診断早期から適切な血糖コントロールを行うことが推奨されます。
- 高齢の糖尿病患者では、認知機能や日常生活動作(ADL)、併存疾患、使用薬剤などを考慮し、重症低血糖を避けることを重視した個別の血糖コントロール目標を設定します。