溶血性貧血
概要・推奨
概要
- 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は、赤血球膜上の抗原と反応する自己抗体が後天的に産生され、抗原抗体反応の結果として赤血球が破壊されることで生じる免疫性溶血性貧血の総称です。
- 病因や病態、臨床経過、予後において多様性に富む不均質な疾患群と理解されています。
- 自己抗体の反応至適温度によって、体温付近で反応する温式抗体による「温式自己免疫性溶血性貧血(温式AIHA)」と、体温以下の低温で反応する冷式抗体による「寒冷凝集素症(CAD)」および「発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)」に大別されます。温式抗体と冷式抗体の両方が検出される混合型も存在します。
- 基礎疾患の有無により、原因となる疾患を認めない「特発性(一次性)」と、全身性エリテマトーデス(SLE)やリンパ増殖性疾患などの基礎疾患に伴う「続発性(二次性)」に分類されます。
- 日本におけるAIHAの推計受療患者数は約1,500人とされています。病型別では温式AIHAが47.1%を占め、寒冷凝集素症が4.0%、発作性寒冷ヘモグロビン尿症が1.0%でした。
- 特発性温式AIHAは、若年層(10~30歳で女性優位)と老年層(50歳以後)に多くみられます。寒冷凝集素症は70歳前後に発症のピークがあります。発作性寒冷ヘモグロビン尿症は、現在ではそのほとんどが小児期にみられます。
- 温式AIHAの治療は副腎皮質ステロイドが中心ですが、近年、寒冷凝集素症に対する新たな治療薬が登場し、温式AIHAにおいてもリツキシマブの有効性が確立されつつあります。
推奨
- 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)が疑われる場合、まず広範囲直接クームス試験を行うことが推奨されます。陽性の場合は特異的クームス試験で赤血球膜上の免疫成分を確認し、IgGが検出されれば温式AIHA、補体成分のみが検出されれば寒冷凝集素症(CAD)などを疑い、精査を進めることが推奨されます。
- 直接クームス試験が陰性でも臨床的にAIHAが強く疑われる場合は、より感度の高いゲルカラム法によるクームス試験や、赤血球結合IgGの定量を行うことが診断に有用です。
- 貧血症状のある温式AIHAの一次治療として、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン 1mg/kg/日)の投与が推奨されます。新規診断の重症例や副腎皮質ステロイドの長期投与を避ける必要がある症例には、リツキシマブの併用を検討することがあります(適応外使用)。