癌性髄膜炎

概要・推奨

概要

  • 髄膜がん腫症は、がん細胞が軟膜やくも膜に広がりをもって浸潤あるいは播種をきたした病態です。がん性髄膜炎とも呼ばれますが、がん性髄膜炎という名称はより広義に硬膜への浸潤を含む病態にも用いられることがあるため、区別して扱うことが望ましいです。
  • がん患者の4~15%に発生するとされ、増加傾向にあります。
  • 患者数では肺がんと乳がんが多くを占めており、本邦では次に消化器がんが多くなっています。
  • がん種別の発生頻度では悪性黒色腫が最も高く、次いで小細胞肺がん、乳がん、非小細胞肺がんの順とされています。
  • 生存期間は乳がんが最も長く、悪性黒色腫が最も短いです。
  • 腫瘍細胞はくも膜下腔において、組織に付着した腫瘍結節として存在する形態と、組織に付着せず脳脊髄液中に広汎に分布する浮遊がん細胞の形態をとり、両者が併存することも多いです。
  • 髄膜への転移は、血行性、リンパ行性、あるいは直接的な波及によって起こります。
  • 転移性脳腫瘍の治療中に髄膜がん腫症を発症することがあり、悪性黒色腫や後頭蓋窩の転移の場合に多いとされます。
  • 神経学的障害としては、巣症状、てんかん発作、頭蓋内圧亢進症状、高次脳機能障害、精神症状に加え、髄膜刺激症状、脳神経症状、肩・後頸・背部痛、頭痛を呈することがあります。
  • 診断後の生存期間中央値はおよそ3ヵ月程度です。
  • 生存期間の延長に寄与する因子として、乳がんであること、全身状態が良好であること、原病の診断から髄膜がん腫症の診断まで1年以上経過していること、髄注化学療法の治療歴があることなどが報告されています。
  • 画像診断にはMRIが推奨され、造影FLAIR画像が診断に有用なことがあります。
  • 治療効果の判定では画像評価が困難なことがあり、髄液所見や臨床所見と合わせて総合的に判断します。
  • 症状が多彩であるため診断が遅れやすく、関連するがんの既往や治療歴がある患者では常に念頭に置く必要があります。

推奨

  • 腫瘍の広がりおよび粗大病変の存在に応じて、放射線治療を考慮します。
  • 原発腫瘍の薬物療法感受性を根拠として、全身薬物療法または抗がん薬の髄腔内投与を行うことを考慮します。
  • EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子陽性など、分子標的薬の適応がある症例では、対応する薬剤の使用を優先的に検討します。