マロリー・ワイス症候群
概要・推奨
概要
- マロリー・ワイス症候群(MWS)は嘔吐などによる腹腔内圧や胃食道内圧の急激な上昇により、食道胃接合部付近に縦走する粘膜裂創が生じ、吐血や下血をきたす疾患です。
- 上部消化管出血(UGIB)のうち3~11%を占め、消化性潰瘍出血以外の非静脈瘤性上部消化管出血(NVUGIB)としては最多です。
- 好発年齢は30~50歳で、約90%が男性です。
- MWSの誘因として、飲酒が関与する嘔吐(30~50%)、吃逆、咳、排便時の怒責などが報告されています。内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)などの長時間の内視鏡治療によっても生じることがあります。
- 裂創の発生部位は約8割が噴門部に発生し、周在性は小彎側(51.5%)に最も多く認められます。
- 自然に止血していることも多いですが、抗血栓薬を内服している患者や肝硬変などの易出血性の背景疾患を有する場合には出血が遷延することがあります。
推奨
- MWSに伴う遷延する上部消化管出血(UGIB)もしくはハイリスク症例に対しては、機械的な止血を中心とした内視鏡的止血術を行うことが推奨されます。内視鏡的止血術としては、クリップ法や内視鏡的結紮法(EBL)による機械的な止血の他に、高張食塩水エピネフリン(HSE)局注法があります。責任血管が食道側にある場合は、食道筋層が菲薄であるため、HSE局注法や凝固焼灼法では穿孔のリスクを伴います。そのため、この場合を含め機械的な止血が優先されます。止血が困難な場合は、血管造影(IVR)や手術療法が考慮されます。OTSC(over-the-scope-clip)は、コントロールに難渋する症例で、手術療法などの高侵襲治療の前に検討される選択肢となります。
- MWSは自然止血が得られることも多く、内視鏡観察時に止血している場合は、絶食、輸液、酸分泌抑制薬の投与などの保存的治療が選択されます。再出血予防は消化性潰瘍出血に準じて行われ、絶食・補液管理の上で酸分泌抑制剤や粘膜保護剤の投与を行い、臨床症状や採血データなどで判断し経口摂取を再開します。