大動脈弁閉鎖不全症
概要・推奨
概要
- 大動脈弁閉鎖不全症(AR)は、先天性または後天性の異常により大動脈弁尖間の接合が障害され、拡張期に大動脈から左室へ血液が逆流する状態です。
- 原因は、弁自体に器質的変化がある場合と、弁に変化がなくても上行大動脈の拡大により弁尖の接合が妨げられる場合があります。
- 急性ARは、感染性心内膜炎、大動脈解離、外傷などによって急激に発症します。左室拡張末期圧が急上昇し、肺うっ血や低心拍出状態を呈するため、迅速な診断と治療が必要です。
- 慢性ARは、病態の進行が緩徐であるため、左室は容量負荷に対して肥大や拡大といった代償機転をとります。このため長期間無症状で経過することが特徴です。
- 慢性ARの血行動態は、左室に対する持続的な「容量負荷」と「圧負荷」が同時に生じることが特徴です。代償期では左室壁が肥厚するため、長期間にわたり左室駆出率(LVEF)は保持されます。
- 長期間の負荷により代償機転が破綻すると、後負荷不適合(afterload mismatch)が生じ、LVEFの低下が始まります。この時点で初めて症状を自覚することが多いとされています。
- さらに進行すると心筋障害が不可逆的になり、左室機能低下が固定化します。
推奨
- 症状のある重症ARに対しては、左室機能や拡大の有無にかかわらず大動脈弁手術が推奨されます。
- 無症候性であっても、重症ARで左室機能低下(LVEF < 50%)を認める場合には、早期の大動脈弁手術が推奨されます。
- 無症候性の重症ARで左室機能が保たれている(LVEF ≧ 50%)場合でも、著しい左室拡大(LVESD > 45 mm)を認める場合は大動脈弁手術が推奨されます。