抗菌薬総論

概要・推奨

概要

  • 抗菌薬の理解の基本は、第1にスペクトラム、第2に臓器移行性、第3に投与量や副作用を理解することです。
  • 治療対象となる臓器とそこにいる微生物が特定されれば、使用すべき抗菌薬は臨床的な経験から標準的なものが決まっています。
  • 感受性検査における最小発育阻止濃度(MIC)などのin vitroの結果は、抗菌薬を選択する上での一要素に過ぎません。
  • 抗菌薬は作用機序によって、静菌性抗菌薬と殺菌性抗菌薬、また細胞壁合成阻害型と蛋白やDNA合成阻害型に分類されますが、これらの分類は絶対的なものではありません。
  • 感染症を治癒させる最大の要素は患者自身の免疫力であり、日常診療では殺菌性と静菌性の抗菌薬を厳密に使い分ける必要はありませんが、心内膜炎や髄膜炎など、殺菌性抗菌薬が必要とされる特定の病態も存在します。
  • 作用機序による分類は薬力学(PD)の理解に繋がり、時間依存性の抗菌薬(例:β-ラクタム剤)ではMICを超える時間を長く保つための頻回投与が、濃度依存性の抗菌薬(例:アミノグリコシド系)では高い濃度を得るための1日1〜2回の投与が効果的とされます。
  • 抗菌薬が感染組織へ移行・浸透しなければ効果はなく、中枢神経系や前立腺など、特に薬剤が移行しにくい臓器もあります。
  • 抗菌薬の副作用は、誰にでも起こりうる予測可能なType Aと、個体の特殊性による予測困難なType Bに大別されます。
  • 抗菌薬による脳症は、てんかん発作やミオクローヌスを特徴とするタイプI、精神症状を主とするタイプII、小脳失調を特徴とするタイプIIIなどに分類されます。
  • ほとんどの感染症治療薬は胎盤を通過し母乳に移行するため、妊娠中や授乳中の使用には注意が必要です。
  • 抗菌薬の予防投与は、原則として科学的に有効性が証明された臨床状況に限定して行われるべきです。

推奨

  • 治療対象の臓器と微生物が特定された場合、臨床的な標準治療として確立されている抗菌薬を選択することが推奨されます。
  • 感受性検査のMIC値が低いという理由だけで抗菌薬を選択せず、病巣への移行性や臨床的な標準治療を総合的に評価することが重要です。
  • 作用機序に基づいて自己流で投与法を決定せず、個々の抗菌薬に対して標準とされる投与法を用いることが推奨されます。