視神経脊髄炎スペクトラム障害

概要・推奨

概要

  • 視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)は、視神経炎と脊髄炎を中核とする中枢神経系の自己免疫疾患です。本疾患はAQP4抗体が病態の中心となる抗体陽性例と、病態の異なる疾患が含まれうる抗体陰性例に大別されます。
  • 診断においてはアクアポリン4(AQP4)抗体の測定が極めて重要で、この抗体が陽性であれば視神経炎、脊髄炎、最後野症候群などの中核症候のいずれか1つを認め、他疾患が除外できればNMOSDと診断できます。
  • 有病率は地域により異なり、世界全体では成人で10万人あたり0.34〜10人程度です。MSのように人種や地域による大きな差はありませんが、東アジアやアフロ・カリブなど有色人種に多く、欧米白人では少ない傾向にあります。発症年齢は小児から高齢者まで幅広いですが、30歳代後半から50歳代にピークがあり、60歳以上での発症も20〜30%に認められます。日本における2017年の調査では、有病率は5.4人/10万人、発症年齢中央値は44歳で、患者の86.7%は女性でした。
  • 重症の視神経炎と脊髄炎を特徴とし、延髄最後野病変による難治性の吃逆・嘔吐や、視床下部病変による症候性ナルコレプシーなどを認めることがあります。
  • シェーグレン症候群、慢性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症などの自己免疫疾患を合併することが多いです。
  • 検査所見として、血清AQP4抗体が最も重要です。測定法にはELISA法とCBA法があり、CBA法の方が感度・特異度ともに優れていますが、日本ではELISA法のみが保険適用となっています。これ以外に髄液の細胞数増多(50/μL超)、グリア線維性酸性蛋白(GFAP)の著明な上昇が特徴的です。オリゴクローナルIgGバンド(OB)の陽性率は10〜20%と低いです。
  • MRIでは、脊髄中央部を中心に3椎体以上連続する髄内T2高信号病変や、視神経長の半分を超える長大なT2高信号病変が特徴的です。
  • 病因として、AQP4抗体が補体依存性あるいは抗体依存性にアストロサイト傷害を引き起こすことが明らかにされています。
  • 病理学的には、急性期病巣の血管周囲に免疫グロブリンや活性化補体(C9neo)の沈着がみられ、血管周囲優位にAQP4の発現が広範囲に低下します。

推奨

  • AQP4抗体陽性NMOSD患者における再発予防治療では、急性期治療終了後に速やかに治療を開始することが重要です。経口副腎皮質ステロイド薬の単剤での長期維持療法は副作用のリスクが高く、再発予防効果も限定的であるため推奨されません。
  • 再発予防治療の選択肢として、経口免疫抑制薬(アザチオプリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルなど)と経口プレドニゾロンの併用療法、または生物学的製剤(エクリズマブ、ラブリズマブ、サトラリズマブ、イネビリズマブ、リツキシマブ)による治療があります。
  • 経口免疫抑制薬とプレドニゾロンの併用療法を選択する場合、免疫抑制薬は効果発現まで数カ月を要するため、その間はプレドニゾロンで再発を予防します。免疫抑制薬の効果が安定した後にプレドニゾロンを漸減し、最終的には最小限の維持量(5mg/日程度)まで減量するか、可能であれば中止を目指します。