脳梗塞
概要・推奨
概要
- 脳梗塞は、脳血管が血栓や塞栓などにより閉塞し、その支配領域の脳組織が血流・酸素不足から壊死に陥る疾患です。2015年のデータでは日本における脳血管障害の約76%を占め、成人の主要な死因および後遺症の原因となっています。
- 脳梗塞の病型分類には国際的にTOAST分類が用いられ、主要な病型としてアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞があり、これ以外にその他の原因による脳梗塞と原因不明の脳梗塞があります。病型により治療方針が異なるため、正しい病型診断が重要です。
- 診断においては、最終健常確認時刻の把握、神経学的評価(NIHSS、mRSなど)、頭部CTまたはMRIによる画像診断が基本となります。画像診断では出血の除外、早期虚血性変化の評価、閉塞血管の同定を行い、治療適応を判断します。また、心電図、心エコー、頸動脈エコーなどにより原因検索を行い、再発予防の方針を決定します。
- 超急性期には発症からの時間に応じて、再灌流療法(経静脈的血栓溶解療法や機械的血栓回収療法)により虚血部位への血流再開を行います。急性期には病態に応じた抗血栓療法を行い、慢性期には再発予防を目的とした抗血栓療法と危険因子管理が中心となります。再発予防について、心原性脳塞栓症では抗凝固療法が、非心原性脳梗塞では抗血小板療法が基本となります。
- 予後は病型や重症度、治療開始時期により大きく異なります。再発予防には、適切な抗血栓療法に加えて、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの危険因子の厳格な管理、禁煙、生活習慣の改善が不可欠です。脳梗塞診療では、脳卒中診療科を中心に、循環器科、腎臓高血圧科、糖尿病代謝内分泌科など多診療科による包括的アプローチが重要となります。
推奨
- 発症4.5時間以内の超急性期脳梗塞では、適応を慎重に判断した上で、遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクティベータ(rt-PA、アルテプラーゼ)0.6 mg/kgの静脈投与が勧められます。投与は、総投与量の10%をボーラス投与し、残りの90%を1時間かけて持続静注します。
- 発症時刻が不明である場合、頭部MRIの拡散強調画像(DWI)に虚血性変化があり、FLAIR画像で同部位の変化が明瞭でない場合(DWI/FLAIRミスマッチ)には、アルテプラーゼ静注療法を考慮できます。
- 抗アミロイド抗体治療薬(レカネマブ、ドナネマブ)の投与中の患者に対する静注血栓溶解療法は、アミロイド関連画像異常(ARIA)の有無を確認する必要があります。投与前のMRI所見を必ず確認し、通常より慎重な検討の上で行うことが必要です。