脳静脈血栓症
概要・推奨
概要
- 脳静脈洞血栓症は全脳卒中の0.5~1%を占めるまれな疾患です。患者の78%が50歳以下の若年者であり、男女比は約1対3と女性に多くみられます。
- 成人における主な誘因や基礎疾患として、女性では経口避妊薬の使用、妊娠、産褥期が重要です。遺伝性血栓性素因にはアンチトロンビンⅢ欠乏症、プロテインC欠乏症、プロテインS欠乏症、第5凝固因子Leiden変異、プロトロンビンG20210A変異があります。後天性因子として、抗リン脂質抗体症候群、感染症、悪性腫瘍、外傷、外科手術後、脱水、鉄欠乏性貧血、ベーチェット病、ホルモン療法などが挙げられます。
- 小児では年間10万人あたり0.25~0.67人の発症率で、その約半数は新生児および乳児期に発症します。新生児では周産期合併症として出生時低酸素症、早期破水、母体感染などが原因となり、脱水も重要な誘因です。より年長の小児では急性頭頚部感染症である乳様突起炎やネフローゼ症候群などが原因として挙げられます。
- 主症状は持続性で進行性の頭痛であり、患者の80~90%に認められます。その他、頭蓋内圧亢進症状として悪心や嘔吐、乳頭浮腫、外転神経麻痺を呈し、局所神経症状や痙攣発作を伴うこともあります。診断にはMRIとMR venographyが最も有用であり、CTやCT venographyよりも感度が優れています。発症直後は巣症状があるにも関わらず、頭部MRIで異常がでないこともあります。
- 罹患静脈洞は上矢状静脈洞が55%と最も多く、次いで横静脈洞が51%、直静脈洞が24%の順であり、約半数で複数の閉塞病変を認めます。
- 予後に関しては、急性期に3~15%が死亡し、約15%程度が死亡あるいは障害を残します。抗凝固療法による早期治療で予後良好となる例が増えていますが、診断や治療の遅れがあると死亡や重度障害となることがあります。なお、新生児では2~20%の死亡率と38~59%の神経学的後遺症が、小児では4~12%の死亡率と4~52%の神経学的後遺症が報告されており、新生児でより予後不良とされています。予後不良因子としては、悪性腫瘍、昏睡、深部静脈血栓症、精神状態障害、男性、頭蓋内出血が挙げられます。
推奨
- 急性期において、未分画ヘパリンを用いた抗凝固療法が第一選択となります。頭蓋内出血を伴う例でもヘパリンを使用することが妥当です。脳静脈洞血栓症における出血は静脈還流障害による静脈圧上昇に起因するため、血栓を解除することが根本的な治療となります。未分画ヘパリンの代わりに低分子ヘパリンの使用を考慮してもよいです。
- ワルファリンによる経口抗凝固療法を少なくとも3か月以上は継続することが妥当です。一過性の原因による脳静脈血栓症ではワルファリンの投与期間は3~6か月とされます。原因不明の場合は6~12か月、脳静脈血栓症を繰り返す場合や重度の凝固異常がある場合では抗凝固療法を継続します。
- 予後不良因子を有する脳静脈洞血栓症に対する血栓溶解療法および機械的血栓回収療法は、有効性が確立していません。