一過性脳虚血発作(TIA)
概要・推奨
概要
- 一過性脳虚血発作(transient ischemic attack、以下TIA)は、局所脳または網膜の虚血に起因する一過性の神経機能障害で、画像上急性梗塞の所見がないものと定義されます。TIAは脳卒中発症の重大な危険因子であり、TIA発症後90日以内の脳卒中発症危険度は15~20%と報告されています。TIAは脳梗塞と同様に迅速な評価と治療開始が求められる緊急性の高い病態です。
- TIA発症後の脳梗塞のリスク推定にABCD2スコアを用います。ABCD2スコアは7点満点で年齢、血圧、臨床症状、持続時間、糖尿病からスコアを計算します。
- 非弁膜症性心房細動患者の脳卒中リスク層別化に用いられるCHADS2スコアにおいて、TIAの既往は脳卒中の既往と同様にリスク因子として2点と評価されます。日本人を対象としたレジストリー研究では、CHADS2スコアが0点での脳卒中発症率は年間0.5%、1点で0.9%、2点で1.5%、3点以上で2.7%以上と報告されており、TIAの既往がある患者では少なくとも年間1.5%以上の脳卒中リスクを有することになります。
- TIAの原因は多様であり、アテローム血栓性、心原性塞栓性、その他の原因による一過性の脳局所虚血が含まれます。内頚動脈や中大脳動脈などの主幹動脈の閉塞あるいは高度狭窄症によるアテローム血栓性TIA、非弁膜症性心房細動などによる心原性塞栓性TIA、さらには頭蓋内外の動脈解離によるTIAなどがあります。
- TIAの診断においては、症状の原因を特定し、脳梗塞や脳出血などの他の疾患を除外するために頭部画像検査が必須です。特にMRIの拡散強調画像(DWI)は早期の虚血性変化の検出に有用です。また、塞栓源となりうる心疾患や原因となる血管病変を評価し、その後の脳梗塞発症リスクを評価することも重要です。
推奨
- 非心原性TIA患者の再発予防には、抗血小板薬の投与が勧められます。発症早期の軽症非心原性TIA患者には、亜急性期(1か月以内を目安)までの治療として、アスピリンとクロピドグレルの2剤併用投与が勧められます。また、非心原性TIAの再発予防には、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)の積極的な投与が勧められ、LDL-コレステロールを100 mg/dL未満に管理することが妥当です。頸動脈や頭蓋内血管の動脈硬化性狭窄、冠動脈疾患を合併している場合は、70 mg/dL未満を目標とすることを考慮します。